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パリの15区市役所広場で、5月17日、18日にブルターニュ祭りが行われた。パリ-ブルターニュ協会が、ブルターニュ公国の最後の公女であり、二度のフランス国王との結婚によりフランスの女王でもあったアンヌ・ド・ブルターニュの死後500周年を記念して催したものだ。
市庁舎の前の広場では、民族衣装を着た人たちがブルターニュの伝統的ダンスを披露していた。このブルターニュダンスは、無形世界文化遺産にも登録されている。
ブルターニュ地方は、フランスの北西に位置する。パリから、モンサンミッシェルまで西へ350キロの道のりであるが、そのモンサンミッシェルは、ノルマンディー地方とブルターニュ地方のちょうど境界に位置する。モンサンミッシェルまでがノルマンディー地方、さらに西に行くとブルターニュ地方に入ると考えればわかりやすい。
ノルマンディ地方とブルターニュ地方は隣り合っているため、特産物は似通っている。酪農が盛んで、バターやチーズを多く生産している。また、雨が多い地方であるためブドウが育たず、ワインの生産ができな。そのため、ブドウではなく、リンゴでお酒を作ったがそれがシードルである。
また、土地がやせていたため、小麦のあまり取れず、その代りに蕎麦が栽培された。フランス人は、この蕎麦粉を黒い小麦粉と呼ぶ。そのそば粉で作った灰色のクレープは「ガレット」と呼ばれ、この地方の名物になった。米が取ず、蕎麦をつくったために有数の蕎麦どころとなった信州に似ている。しかし、日本人は蕎麦を麺にして、フランス人はクレープにした。そんなところが面白い。
ブルターニュ取れた良質なバターで外側をカリッと焼き上げたガレットは絶品である。卵とハムとチーズを入れたものを「ガレット・コンプレット」(何も欠けていないの意)と呼ぶ。写真は、ガレット・コンプレットと作っている。クレープ生地が灰色なのが分かるだろうか。長蛇の列ができていて、大人気だった。
蕎麦畑が一面に広がる地方では、蕎麦が花をつけるころ、その蜜を求めてミツバチがやってくる。その蜂蜜で作ったお酒がシュシェン(Chouchen)である。蜂蜜を発酵させているので、琥珀色である。度数は14度ほどで、甘くて飲みやすい。キリッと冷やして食前酒、あるいは食後酒として飲むのが伝統的だ。
こちらではソーセージを焼いている。非常においしかった。この焼きたてソーセージにたっぷりとマスタードをかけて、蕎麦粉のガレットでくるくるっとまいたものが「ガレット・ソシース」である。ブルターニュの人が小腹のすいた時に食べる食べ物だ。ブルターニュの首都であるレンヌでは、サッカーの試合がある日は、この屋台がスタジアムの周りにずらっとたち並ぶ。
最後の紹介するのは、クイニー・アマン(kouign amann)。ブルターニュを代表するバター菓子である。薄いパン生地を何層にも重ねて焼き上げたお菓子であるが、その層の中にはたっぷりとバターと砂糖が入っている。非常においしいが、つい食べ過ぎると胃がもたれてしまうという、恐ろしいお菓子でもある。ある時、パン屋が生地作りを失敗してしまい、捨てるのはもったいないので、それを薄く延ばし、たっぷりとバターと砂糖を入れて焼き上げたらおいしかった、という説と、小麦が取れなかったが、一方バターは豊富に取れた年だったので、少量のパン生地に大量のバターと砂糖を入れて、焼き上げたのが起源などの複数の説がある。ぜひ、一度は食べてみたいお菓子である。
(渦)
パリ15区のブルターニュ祭り
2014-05-31
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