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フィンランドが生んだ20世紀を代表する建築家、アルヴァ・アールト Alvar Aalto (1898-1976) が手掛けた建築がパリ郊外にあります。(アアルトと書く場合もあるようですがWikipédiaに合わせてここではアールトと書きます。)
『ルイ・カレ邸 Maison Louis Carré 』
建築主はフランス人画商のルイ・カレ氏 (1897-1977) 。ルイ・カレ氏は1956年、妻オルガと住むために購入したパリ郊外の土地に、別荘の建築をアールトに依頼しました。
ルイ・カレ邸の一般公開は、夏季の週末の午後のみ。公式サイトで事前に予約する必要があります。英語または仏語の見学コースに参加して見学します。1時間みっちりの見学。係員の方の説明がものすごく丁寧で、とても勉強になった!
コロナ後は、1グループあたり最大8名に制限して見学ツアー再開です(コロナ前は20名程)。マスク必須。あと、これはコロナ前からだっただそうですが、家具や床を傷めないよう、靴にカバーをして見学しました。
別荘の建築を依頼するにあたり、「近代建築の父」と称される巨匠ル・コルビュジエも候補にあがったそうですが、オルガ奥様が「コンクリート建築はイヤ!」とル・コルビュジエに頼むのを拒んだそう。
アールトに決まった後、設計にあたりルイ・カレ氏がアールトに伝えた設計条件はたったひとつで「斜面から美しい景色を見えるように」とのことでした。それ以外はすべてのデザインをアールトに一任。予算上限なし!だったそうです。さすが大富豪。
実にこのルイ・カレ邸は小高い斜面の上に建てられており、当時は依頼主の望み通りリビングから美しい景色が一望できていたそうです。ですが、現在は木々がぐんぐん高く育ってしまい、景色が見えなくなってしまっていました。
アールトは奥様の意を汲んだのか、コンクリート部分は木で隠すなど、こだわりのデザインを見せています。
家具や庭の設計まで、すべて計算されたアールトデザイン。ドアノブやランプまで、すべて!
めずらしい3本脚のテーブルもアールトデザインの家具ですが、3本でも安定するよう根元に工夫がされていました。ランプひとつにとっても、360度明かりが届くような工夫も。すばらしいアイディアです。
玄関のエントランス天井。日照時間が少ないフィンランドでは、外光を最大限に家の中に取り込み、室内を明るく、温かくする工夫がされているそうなのですが、これもそのひとつだそうです。またアールト Aalto とはフィンランド語で波 vagueという意味だそうで、その波をモチーフにした緩やかなカーブの天井デザイン。
ルイ・カレ氏の部屋。奥にバスルームが続きますが、バスルームにはサウナ室がありました。さすが、これもフィンランド調ですね。
本日一緒に見学したグループに、パリで建築を学んでいる男子学生さんがいました。3月以降学校が休校となり、授業がなくなってしまったそうです。「アールト建築どうだった?」と聞いたら「J'ADORE !! (とても気に入った!)」と目をギラギラに輝かせていました!
「日本ではアールトよりル・コルビュジエのほうがずっとずっと有名だけど、どうしてだと思う?」と聞いたら、「ル・コルビュジエは建築をさまざまな理論で体系づけ展開していったから、伝承しやすくまた学びやすいんだよね」とのことでした。なるほど。
ルイ・カレ邸、隅々まで綿密に設計された、最高の芸術作品です。
アールト建築はフランスにはルイ・カレ邸たったひとつなんだそうです。今度は他国のアールト建築も巡礼してみたい!
(城)
フィンランド建築家アールトのルイ・カレ邸
2020-07-28
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