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    ル・ランシーのノートルダム圧巻ステンドグラス


    2017-05-22

  • 先日のブログでご紹介したパリ東近郊の町、ル・ランシー市のノートルダム教会のステンドグラスを再度紹介します。

    10枚の宗教画を元にしたステンドグラスがありますが、これを作成したのは、フランスの画家、モーリス・ドニ。かのマチスにも多大なる影響を与えた偉大なる近代画家の一人です。

    モーリス・ドニは、ノルマンディー地方の港町グランヴィルで生まれ、パリで育ちます。ルーブル美術館のフラ・アンジェリコの絵画に感銘を受け、宗教画家になることを決心しますが、当時活躍していた同時代の画家(シャヴァンヌなど)にも影響を受けます。画家になるべく、美大や私塾に通いますが、そこでのアカデミックで伝統的すぎる授業にうんざりし、知り合ったポール・セルジエなどとナビ派を作ります。「ナビ」とはヘブライ語で預言者の意味。自分たちが新しい表現の形を作り出すという意思の表れでした。モーリス・ドニは、ナビ派のなかでも理論家としても活躍します。

    彼はその後流行する抽象画を先取りし、絵画とは、「戦場の馬、裸婦、あるいは何らかのエピソードを表現するものである前に、ある構成された秩序に従って色をぬられた平面である」と発言しています。彼はこの発言によって20世紀の近代絵画の理論的先駆とみなされています。

    このように絵画論の最前線を生きていたアヴァンギャルドのモーリス・ドニは、1919年以降、戦争と妻の死、長年の病気などを経て、キリスト教美術に戻ってきます。ル・ランシーのステンドグラスがデザインされたものちょうどこの時代です。

    ステンドグラスは大きく分けて、3つのテーマ:キリストの生涯(誕生、カナの婚礼、十字架を担うキリスト、磔にされるキリスト)、マリアの生涯(受胎告知、訪問、誕生、カナの婚礼、磔、マリアの聖体拝領、精霊降臨、聖母の被昇天)そして、第一次世界大戦、マルヌの戦いに分かれています。

    これらのの三つのテーマが交差しあうことで、祖国のために戦い、苦しみ、命を落とした兵士たちは、イエスが受けた受難と重なりあい、その苦しみはマリアへの祈りによって救済されるという大きなテーマが浮き上がります。

     

    その ステンドグラスを実際に制作したのは、マルグリット・ユレ(1896-1967)という女性のステンドグラス職人です。限られた予算と製作期間たった一年弱という速さで作り上げました。この女性が宗教的ステンドグラ スに非具象を最初に導入した人物として後年位置づけられることになります。

    圧倒されるステンドグラスの中から10枚のモーリス・ドニの作品も是非探してみて下さい。

     

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    (跳)


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