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建物の模型がガラスケースの中に入っています。
赤い大きな煙突が屋根から上に突き出ています。何かの工場の模型のようです。
こちらは、粉々に砕く機械。大きくて、重そうな車輪がぐるぐる回ることで、素材をすりつぶします。
すりつぶしたものは、この釜の中に入れられ、火が入れられます。
どうやら、工場のようです。
こちらは、スコップなどが展示されていますが、その手前にはダウンジャケットを着たマネキンが!品定めをしているのは、パリジェンヌ。
いったいなぜ、博物館で服を販売しているのかというと、ここは博物館ではなく、パリのユニクロ、マレ店なんです。
2年前に開店したこの店舗、マレにあった工場を改装して現店舗にしています。その場所が持っていた歴史を大切にするため、いまでも当時使われた道具がそのまま展示されているのです。
生まれ変わった工場。かつての姿とみくらべると。。。あまりに違いに驚きます。
19世紀半ば、ここにはもともとソシエテ・デ・ソンドルという工場がありました。ソンドルとうのは、「灰」のこと。彼らは、「灰の洗濯屋」とも呼ばれていました。この職業はあまり知られていませんが、いまでも存在する職業です。仕事の内容は、宝石メーカーや、アクセサリーメーカーからでる削り屑、やすり屑を回収し、そこにまじっている貴金属を取り出すというものです。
19世紀までは、この仕事をする専用の職人たちがいました。しかし、パリ金銀細工職人たちからみて、どうも彼らの仕事の質が悪い。費用もかかる。そこで、1859年に、職人どうして団結して、アトリエの中で出た削りくずをそれぞれ集め、職人たちで共同出資してこの会社ソシエテ・デ・ソンドルを創設しました。
現在ではおしゃれ地区の代名詞、高級ブティックの界隈マレに工場を建てるなんて考えられませんが、当時のブルジョワはサンジェルマン地区にどんどん移り住み、マレ地区は工場地帯だったそうです。
マレ地区の目抜き通りのフランク・ブルジョワ通りに面している入口は工場とは思えないような重厚なファサード。通りに面したこの建物は、会社の事務所として使用されていました。地下には巨大な釜があり、その釜から巨大な煙突が伸びています。この釜からでる蒸気が先ほどの臼の動力になっていました。この煙突はしっかりといまでもレジの前にあります。
宝石商は毎月、先月出たほこりと一緒くたになった削りくずを持ってきます。50キロから100キロにもなったそうです。
これらのくずは、まず熱せられ、灰にされた後で細かくすりつぶします。粉状になった灰は、ふるいにかけられ、洗浄され、水銀により処理が行われます。このようにして、このくずの中に混ざっているそれぞれの金属(金、銀、プラチナ)を分離することができるそうです。それぞれの金属はまとめられ、もう一度どかさせることによってインゴットにされます。屑を持ってきた宝石商人は、自分のごみの中から光輝く金属が再び生まれるのをじっと監視していたそうです。
この工場での活動は、21世紀まで続き、従業員は100人ほどもいたそうです。ソシエテ・デ・ソンドル社は現存しますが、いまではパリ郊外に場所を移し、マレにあった工場はユニクロが当時の精神をうまく残しながら日本が誇る衣料を販売しています。
文化遺産を残す国、フランスで商売をするには、ユニクロを見習わなければいけませんね。
UNIQLO マレ店
39 Rue des Francs Bourgeois, 75004 Paris
渦
博物館?いえいえい、実はここ「xxxx」なんです!
2016-12-26
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