-
先日彫刻家である韓国人の友人が展示会で作品を展示しているということで、閲覧しに行きました。
展示会場は、かつてネル館という邸宅が建っており、13世紀にはフランス王フィリップ4世が家族の邸宅を建てるためにこの土地を入手。邸宅が建てられ、その後は、アンリ4世の高官の邸宅が建っていたという非常に歴史のある建物。
18世紀以降も、家主が変わり、19世紀、20世紀には貸住居として使われていたそうです。今では、主に展示会場、コンサートとして使われているこの建物は、1967年に改修され、この天井の装飾が発見されました。
「フランス式」といわれ、17世紀のものです。同時代のパリの邸宅(例えば、マレ地区のスリー館)などには同じような天井装飾を見ることができます。
さて、この歴史ある建物で、今回グループ展をした中にJunseok Moがいます。
1984年韓国南東部、日本海に面したウルサン生まれ。その後、ソウルで彫刻の勉強をして、銅のワイヤーと色付きガラスを組み立てる作品を専門としています。
今回展示されていた作品 « Le jour où on se trouve / 私たちのいる日 »
もまた、銅のワイヤーで組み立てられた作品です。
は、まだフランス語がつたない彼自身の経験がベースになっているといいます。
彼は、2年前にフランスに芸術の勉強をしに来ました。今でも大学の学生寮にいます。フランス語はまだまだ。相手の言っていることもよくわからず、フランス人の友人たちとは常に壁を感じていました。
始めは部屋に閉じこもり孤独を感じていた彼。しかし、フランス語が少しずつわかってくると、言葉の壁は次第に透明になっていき、それぞれの周りにいる人々の個性が見えてきます。そして、学生寮にいる隣人=友人たちもまた、一人ひとりさまざまな夢と不安と楽しみと孤独を抱えて暮らしているのだということが見えてくるのです。
この彼の経験は、この作品の中に体現されています。
まず目に入るのは、この壁。パリの建物でよく見る煙突もうまく表現されています。
外国語の障壁の象徴になっているこの壁は、今や透明になって、内部が見えています。いまではこの壁は、多様な個性を覆い囲む枠組みになります。
それぞれの部屋は、個々の個性を示すように、二つとして同じ形はありません。窓の色、形もすべて違います。違うからこそ、それが集まったときに豊かさが生まれるのかもしれません。
印象的な内部の階段。別の場所に行くための通り道であり、他者とであるための通路であり、内部に入るための入り口でもあります。階段の途中に作られた踊り場と開いたドアは、内部へと私たちをいざなっているようです。
留学経験をした人は誰もが経験するこの無理解の世界。わからない、わかってもらえない。このストレスフルな経験を経ると、相互理解の困難さと貴重さをより痛感します。そんな経験を作品にできるアーティスト、すごいですね。
渦
ネルの館と展覧会「La Beauté d’un tout」
2016-11-07
最新記事