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以前ブログで紹介したサン・シル・ラポピー村。
花が咲き始めたこのシーズンに再訪しました。
質の高い遺産をもつ田舎村だけに承認されるラベル「フランスの最も美しい村々」の一つに選ばれ、フランスの人気TV番組「フランス人が好きな村2012年」ではNo.1に選ばれました。JATA(日本旅行業協会)が選ぶ「ヨーロッパの美しい村30選」にも選出され、いわば、田舎村の3冠。フランス人にも、日本人にも大人気の村です。
しかし、知名度が低いのは、そのアクセスの悪さ。車でないと来られない山の中にあるので、言わずと知れた観光地にとどまっています。
ロット川を見下ろす崖(100mの高さ!)にひっそりとたたずむその姿に、シュールレアリスムの中心人物アンドレ・ブルトンも惚れ込み、晩年この村に住んだほどです。
その名残もあり、いまでもアーティストが住み、彼らの工房兼ショップでは彼らの作品を購入することができます。
絵心がない私でも、風景画を描きたくなるピトレスクな風景が広がっています。
村の特徴は、こんもりと盛り上がった崖。地元の言葉でLAPOPIEとは、「お乳」のことだそうです。この崖はかつて、お乳山とでも呼ばれていたのでしょう。
中世の時代には、ラポピー家、グルドン家、カルディヤック家の3領主によってこの土地は共同支配されていて、要塞であった彼らの領主の館は、このお乳山に受けに築かれていました。その廃墟がところどころに残っています。
お乳山を下っていくと、城下町が広がり、13世紀から14世紀に建設された木組みの家が残っています。保存状態もよく、当時の職人たちのつけた木材の記号の印が残っています。ローマ数字が順番に彫られているのがわかります。
村の見どころの一つは、サン=シール教会です。キリスト教のなかで最も若くして殉教した聖キリクスを祭った教会です。
4世紀初頭、当時のローマ皇帝ディオクレティアヌスはキリスト教徒にたいする迫害を命令します。当時3歳だった聖キリクスは、母親のジュリエットとリカオニア(現トルコ、絶景カッパドキアの隣の町!)から逃げようとしますが、100キロ程離れた村タルススという場所で捕まってしまいます。法廷にてキリスト教を捨てろとせがまれた母親は、それを拒否。拷問の末に殉教します。
その時、母親に抱かれていた子供を、皇帝は引き寄せあやそうとすると、「私もキリスト教徒だ!」と叫んだといいいます。機嫌を害した皇帝は、赤ん坊の片足をつかんで投げ捨て、階段に頭を打った聖キリクスはそのまま殉教してしまいました。
16世紀にゴシック様式にて再建された聖キリクスを祭った教会には、12世紀に建立されたロマネスク様式の礼拝堂が現存します。祭壇の右手にあるひっそりとした空間です。
フランスには魅力ある村がまだたくさんありますね。
(渦)
南仏、ミディピレネーの最も美しい村のひとつ「サン・シル・ラポピー村」
2016-07-25
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