[みゅう]パリ 美術コラム ルーブル美術館の『ミイラ男』 みゅうパリ ブログ記事ページ

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    [みゅう]パリ 美術コラム ルーブル美術館の『ミイラ男』


    2018-07-23

  • モナリザ、ミロのヴィーナスが注目されがちなルーブル美術館ですが、実は古代エジプト時代の作品を6万点所蔵し、6千点を展示するエジプト研究には欠かせない美術館のひとつです。

    古代エジプトときいて、何を思い浮かべますか。ピラミッド、スフィンクス、あるいはミイラ?

    ルーブルには、ミイラも展示されています。

     

    こちらが身長166センチの本物のミイラ。ネムーという男だそうです。紀元前300年から紀元前200年の人と考えられています。

    この中に、本物の遺体、それも2000年以上も前に生きた人の遺体が入っていると思うと少し恐ろしい感じもします。

     

    そもそもなぜ古代エジプト人は、ミイラを作ったのでしょうか。彼らは、死後も人はあの世で生き続けると考えていました。さらに、肉体と精神、名前と一緒にして保存すれば、死後永遠の生を得ることができると考えていたのです。そのために、死後も肉体を保存するミイラという特殊技術が発展したのです。

    もちろん、全ての人がミイラにしてもらえたわけではなく、多くの人は砂漠に掘られた単なる穴に埋められました。ミイラになるにはとてもお金がかかりました。一部の金持ちのみがミイラになることができ、あの世での永遠の生を得たのです。

    さて、ミイラ処理にも料金によって松竹梅とコースがあったようです。

    せっかくなので一番高いコースでお願いします、といった場合は、次のような仕方でミイラにしてもらえたそうです:

    まずは、内臓を取り出します。その後、内臓をあら塩にまぶして、水分を抜きます。これで腐敗するのを防ぎます。

    その後、布で包んでカノックスという壺に入れます。壺の上にはそれぞれ彫刻がしてあり、どの内臓を入れるかが決まっています。

    ハヤブサ:腸をいれる

    犬:胃をいれる

    人間:肝臓をいれる

    サル:肺を入れる

    心臓は、体のなかに戻します。これは、死後の神様、オシリスに裁かれ、永遠の生を得るときに必要なのです。

    身体はワインのようなアルコールであらいます。さらにハーブを使って臭みをなくします。料理の仕込みのようです。そして、塩を塗り込んで70日間乾燥させます。

    仕上げとして、体全体に包帯を巻いていきます。手足から始めて、正方形ができるように巻き上げていきます。

    ミイラを棺に入れる前に、カルトナージュというかざりを置いて、完成です。

    盗掘の被害にあうと、包帯などはほどかれてしまい遺体がむき出しになってしまう場合がありますが、ルーブルのミイラ、ネムーさんは美しい正方形の編み込みを今でも見ることができます。

    死後の世界で生活するために、ミイラで体は確保できました。食べ物にも困らないように、石碑に食べ物の絵を描いてお墓に入れました。生活用品もいるので、家具なども入れます。死後の世界にもナイル川のような大きな川があるのでは?ということで、船の模型(こぎ手つき)も入れます。とにかく、何でも入れるわけです。墓の中は、引っ越しトラックの荷台のような様相になり、古代人のお墓を研究すると、古代人の生活そのものが見えてくるというわけです。

    ルーブル美術館、今回は2回目、3回目だという方、ぜひ、ルーブルのネムーさんに会いに来てください。

    作品データ:男性のミイラ

    時代:プトレマイオス朝時代

    素材:人間のミイラ、亜麻の包帯、カルトナージュ

    大きさ:長さ1.66m

    シュリー翼1階 展示室322にて展示

     

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