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前回美術コラムで紹介したモネの『印象、日の出』があるマルモッタン美術館を紹介します。
地下鉄ラ・ミュエット駅をおりて、徒歩5-6分程度。行くまでに公園の中をとおるので、美術館の周辺をあるいて散歩するだけでも非常に心地よい場所です。
マルモッタン・マネ美術館は、もともとクリストフ=エドモンド・ケレールマン氏の所有する狩猟小屋でした。狩猟小屋といっても邸宅に近いものです。ちなみに、狩猟は王侯貴族たちに最も好まれた趣味の一つでした(シャンボール場も、ヴェルサイユ宮殿も、もともとは狩猟小屋でした)。
その後、1882年、ジュール・マルモッタンの所有になった際、今の邸宅の姿にされ、彼の息子、ポール・マルモッタンの時代に、彼の所有していた帝政時代の芸術作品が多く飾られることになります。
ポール・マルモッタンの死後、1932年に芸術アカデミーに邸宅とコレクションが寄贈されたために、それ以降マルモッタン美術館になります。だからこの美術館は、かつてのブルジョワの邸宅がどのようになっていたのかを垣間見ることができるのです。
この美術館は、モネのコレクションでも有名です。1966年、クロード・モネの2番目の息子ミッシェル・モネがジベルニーの画家のアトリエに残された作品を寄贈することで、モネ最大のコレクションをマルモッタン美術館は所有することになるからです。
これが有名な『印象、日の出』
オランジェリー美術館の至宝ともいえる、モネの『睡蓮』。
その準備作、習作ともいえる絵画がコレクションの中に多く含まれており、マルモッタン美術館では、オランジェリー美術館の睡蓮を思わせるように、円形のスペースに絵画が飾られています。
1996年には、女性印象派画家で有名なベルト・モリゾの子孫であるデニス・ルアートとその妻アニーが、モリゾ自身の作品を始め、モリゾが所有していた印象派の作品を寄贈することで、さらに印象派の見ごたえのある作品が加わりました。モリゾの自画像は、ここで見ることができます。当時、結婚して家庭に入り、仕事するなどは考えられなかったブルジョワ階級の女性のなかで、画業に人生をかけたベルト・モリゾ。マネの絵画の中でもモデルとして登場するモリゾですが、飾り気のない、絵の具でまみれたすがたの自画像は、見るものに感動を与えます。ルーブル、オルセー、オランジェリーはもう行ったという方に、ぜひ訪れていただきたい美術館です。
(渦)
マルモッタン美術館
2016-04-08
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