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    【マドリッド】近郊の街、バルデモーロの魅力を発見!


    2021-06-21

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    先日、マドリッドからアランフェスに行く途中にある街、バルデモーロに行ってきました。

    昔は、王族がマドリッドの王宮からアランフェスの王宮へ移動する際、休憩するために寄る重要な町だったとか。

    現在は、刑務所があったり、治安警備隊(グアルディア・シビル)養成アカデミーがあったりすることでも知られていますが、やはり首都マドリッドのベッドタウンのイメージが強いですね。

    今回は、そんなバルデモーロの旧市街の様子を知ることができたのですが、実は友人に誘われてバロック音楽のコンサートに行ってきたのです。

     

     

    16世紀、大航海時代にイエズス会の宣教師がアジア進出を試みていた時代、日本では、フランシスコ・ザビエルが有名ですが、中国では、マテオ・リッチが知られています。イタリア人マテオ・リッチはイエズス会宣教師であると同時に優秀な数学者で、中国で制作した中国を中心とした世界地図などでも有名。リッチは30年間中国に残りヨーロッパと中国の文化交流に努めましたが、彼の中国宣教団の一員として重要人物だったのが、バルデモーロ出身のスペイン人宣教師、ディエゴ・デ・パントーハでした。最近になって、このパントーハに関する研究が増え、マテオ・リッチの片腕として活躍した彼の功績が知られる様になり、出身地であるバルデモーロでも、彼にちなんだイベントが行われるようになりました。そのひとつが今回のコンサート。

     

    現在、バルデモーロはマドリッド自治州に属す自治体ですが、中世にはトレド司教に属す豪族領のひとつでした。16世紀に王室領となり、以後、首都近郊の重要な町として発展。

    旧市街の中心にあるのが、ラマンチャ地方独特の造りを持つコンスティトゥシオン広場(憲法広場)、昔はここで市場が開かれていたとか。

    今は、観光案内所や展示場があり、バルやカフェのテラスが出ています。

     

    ラマンチャらしい2階建の白壁の家が並ぶ細い道を歩いていくと、石とレンガでできた大きな扉を持つ、16世紀から17世紀スペインの典型的な建物が見えてきました。

     

    カサ・デ・インキシション(異端審問所)です。そして、その建物の前の広場の名前は「プラザ・デ・アウト」、アウトは「判決」を意味するスペイン語ですから、正に、宗教裁判の判決が言い渡され、見せしめの刑罰が与えられた場所だったのでしょう。

     

    そしてその奥がこの町の教区教会、今回のコンサート会場です。装飾様式を見るとやはり16-17世紀の建物で、石とレンガで質素に造られています。つんと尖った屋根の上の塔も、トレドのアルカサルを思い出させます。前述のこの町出身の宣教師、ディエゴ・デ・パントーハのプレートが教会の壁に設置されていました。

     

     

    コンサートは「El Clave del Emperador」(中国皇帝のための音楽)という題名で、「Todos los Tonos y Ayres」というツイン(中国の伝統的な楽器などを含む多種の楽器を弾き、歌うツイン)と「Iliber Ensemble」というグループのコラボ。すごい音量のバロック音楽や中国の楽器が奏でる曲、ツインの女性の歌、モンゴルのホーミーの様なツインの男性の深い声など、様々な音楽文化が融合した素晴らしいコンサートでした。演奏者は全員、中国服で現れ、演奏は教会の祭壇で行われました。

     

    祭壇の絵は、中央がフランシスコ・バリェウ作 の「聖母被昇天」、右側がゴヤ作の「聖母の幻影」、左側が前述バリェウの弟、ラモン・バリェウ作の「聖ペドロの殉教」。フランシスコ・バリェウは若き日のゴヤ応援した画家としても知られていて、ゴヤは彼の妹ホセファと結婚しています。当時、既に宮廷で力を持っていたフランシスコ・バリェウが注文を受け、それを実弟や義弟と共に、家族で分け合って制作した祭壇だったのかなぁ、と思いを馳せました。

     

    祭壇の両脇には二人の宣教師の肖像画、イエズス会の創始者です。右側は、日本で有名なフランシスコ・ザビエル。この絵も、マドリッドの公道の名称にもなっているバロック絵画を代表する画家、クラウディオ・コエリョの作品でした。

     

     

    プログラムを見ると、最初は、イエズス会が中国宣教のため中国皇帝に奏でたバロック音楽、女性の素晴らしい歌声とともにヨーロッパの音楽が演奏されました。第二章からは、中国音楽を取り入れた不思議なバロック音楽でした。聴いていると、16世紀に中国皇帝の前でイエズス会の宣教師達がヨーロッパの音楽を披露し、皇帝が快く楽しめるよう、中国音楽を取り入れたオリジナルのバロック音楽を引き奏でる様子が目に浮かぶ様でした。タイムスリップして大航海時代まで行ってしまった様な気持ちで、楽しめました。

     

     

     

    ディエゴ・デ・パントーハを含むマテオ・リッチ宣教師団は、素晴らしい頭脳で、中国の文化や宗教などを取り込みながらキリスト教の宣教に努めますが、その宣教方法はローマ中央教会に批判され、キリスト教が中国において迫害を受けるなど、中国でのキリスト教伝道活動は日本同様、成功を収めることは出来ませんでした。しかし、ディエゴ・デ・パントーハらを率いたマテオ・リッチは、現在でもアメリカの有名雑誌で世界の歴史上重要人物100人に挙げられているように、東洋と西洋の文化の架け橋となった素晴らしい人物として知られています。

     

    いろんな発見に出会い、いろんなことを考えさせられた、バルデモーロでのコンサートでした! 

     

    Lucymama


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