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前から行きたかったマドリッド王立天文台(Real Obsevatorio de Madrid)へ行ってきました。
これは、18世紀後半、啓蒙王カルロス3世が創設し、太陽物理学を始めとする天体物理学、天体力学、天体観測機器の開発、標準時保持、測地学、地図学、地球磁気学、地震学、気象学など多様な科学の研究を行う場所として造られ、スペインで一番古い天文観測研究機関でした。
現在は、スペインにおいてこれらの学問を統括する国の機関、IGN(国立地理学研究所)の管轄下にあり、国立天文観測所および地球物理学中央観測所となっています。この地球物理学中央観測所は近年注目されている電波天文学の研究におけるパイオニアであり、その技術を応用した天文学、測地学など多分野の発展に貢献しています。火山活動観察&アラート活動の国立データセンター創設もその成果のひとつです。今年の9月19日に噴火し、現在も噴火活動が続いているカナリア諸島のラ・パルマ島の火山のデータも刻々とこのセンターに送られて来ています。
入場はすべて予約制で、専門のガイドさんの説明を聞きながら約1時間半で施設を見て回る見学となります。
18世紀、この王立天文台は、自然科学アカデミー(現在のプラド美術館)や王立植物園と共に、カルロス3世が創設を命じ、当時人気の建築家フアン・ビジャヌエバ(Juan Viellanueva)がデザインしたスペインの首都における『科学の中心』を形成していました。今年7月にマドリッドの新たな世界遺産として登録された「光の景観(Paisajes de la Luz)」に含まれる89のモニュメントのひとつでもあります。
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では、早速、ガイドさんの説明を聞きながら見て行きましょう。
まずは、メインビルディング、19世紀初めにナポレオン軍の侵攻で破壊され、現在あるものは1845年に再建されたものです。新古典様式の建物は南を向いて立ち、コリント式円柱に支えられた壮麗なファサードを入ると、中央円形ホールには地球の自転を表すフーコーの振り子など、当時の観測装置のコレクションが見られます。
建物の東側にあるのがレプソルド子午環(子午線上を通過する天体の位置を精密に観測する望遠鏡)のあるスペース。
レプソルド子午環
ここでは、19世紀から1960頃まで、スペイン標準時の計算・測定が行われていたそうです。
マドリッドのソル広場の州庁舎の時計台は大晦日のカウントダウンで有名ですが、かつては午前零時と正午の1日に2回、ここから正確な時刻を電波信号で送っていたとのこと。
次は、多くの古書を所蔵する図書館です。6000冊を所蔵する図書館、何故か医学書まであるそうです。
この図書館には、マドリッドにおける正確な重力を測定する地点と装置があり、年に2回測定が実施されているそうですが、この日はたまたまその測定が行われていました。
さて、次に訪れたのが、この施設の最大のみどころとも言えるウィリアム・ハーシェルの望遠鏡のレプリカです。
18世紀、ドイツに生まれたイギリス人音楽家ウイリアム・ハ―シェルは、35歳で天文学と出会ってその世界にのめりこみ、天王星や赤外線放射を発見し、数多くの望遠鏡を制作します。
彼が設計して1796-98年に造られ、ここに設置された、直径60㎝、長さ
8メートルの望遠鏡は、当時は世界最大規模でした。しかし、1808年にナポレオン軍侵攻の際に破壊されてしまいました。
幸い、ハーシェルの設計図は難を免れたので、望遠鏡レプリカを造るプロジェクトが立ち上がり、バスク地方ベルメオの造船会社が制作を請け負い、2004年に完成し、現在の場所に設置されました。ガイドさんによると、望遠鏡の設計図は、IKEAの家具の説明書のように分かりやすいそうです。
この部屋ではガイドさんが、作曲家でもあったハ―シェルの交響曲をかけてくれました。
望遠鏡はこの階段で上がって、下方向に覗き込むように観測します。
そして最後に訪れたのが、地球と宇宙科学のスペース。19世紀~20世紀の天文学、測地学、地球物理学などに使われた各種装置のコレクションが展示されているミュージアムです。
ミュージアムの片隅には、現在噴火が続いているラス・パルマスの火山の観測データが音声込みでリアルタイムで表示されていました。
専門家でもあるガイドさんの説明で聞く天文台見学、期待以上に面白かったです!
皆さんも機会があったら、是非、訪れてみてください。
Lucymama
(情報と写真提供:ガイドさん)
【マドリッド】 王立天文台に行ってきました!
2021-12-27
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