-
「偉大なる聖フランシスコ」という意味を持つ、サン・フランシスコ・エル・グランデ教会はマドリッドの王宮とトレド門の間、「ハプスブルグ家のマドリッド」と呼ばれる歴史地区のはずれにあります。
聖墳墓騎士団の流れを汲むこの教会は、エルサレム聖地慈善事業団(Obra Pia de los Santos Lugares de Jerusalen)という、現在はスペイン政府外務省に属す団体によって運営されています。
言い伝えによると、ここには1217年にアッシジのフランシスコが建てた礼拝堂と修道院があったとされています。1561年にフェリペ2世がマドリッドを首都に定めた際に、敬虔なカトリック信者だった王は財を投じてこの修道院を立派な教会に改装し、聖墳墓騎士団の名を与えました。
18世紀後半、マドリッドを民にとっても住みやすい街にすべく様々な都市整備を行った啓蒙王、カルロス3世の時代、フランシスコ会の修道士たちは、原始的な建築を一掃し、1761年~1770年にかけて、現在も残る巨大なドームを持つ教会を造りました。数年後、サバティーニをはじめとする当時活躍していた建築家によってファサードと2つの塔が増築され、1784にネオクラシック様式の現在の外観となりました。
1836年、メンディサバルの永代所有財産解放令が出ると、フランシスコ会修道士は追放され、この施設は国の所有となり、一時は軍司令部だったこともありましたが、19世紀末には教会としての修復が行われ、内部の天井や壁にも当時の著名アーティストらによってさまざまな装飾が施され、その後も何度かの修復が施されて現在に至っています。
教会の構造はローマのパンテオンを模しているそうで、ファサードの入り口を入り、ポルチコを抜けると巨大なロトンダが開けます。
天井は高さ56メートル、直径33メートルのドーム、天頂には大きな明り取り窓があるので内部は非常に明るい。キリスト教会のドームとしては、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂、ローマのパンテオンに次いで世界で3番目の大きさとか。ドームを覆う8枚の絵は漆喰層の上に描かれた油絵で、聖フランシスコの聖痕拝受を表しているそうです。
主祭壇は豪華な4本の柱で仕切られた5つの壁画に聖フランシスコの生涯が描かれています。聖歌隊席は16世紀初頭にセゴビアの修道院のために造られた非常に芸術的価値の高いもので、永代所有財産解放令で没収された後、ここに持って来られたとか。
ロトンダを取り囲むように作られた6つの少し小ぶりのドーム、いずれもドームの高さは20メートル、天頂に明り取り窓があり、床は正方形で三方の壁に絵が描かれ、それぞれ異なる様式で作られた礼拝堂となっています。
聖アントニオの礼拝堂、バロック様式。祭壇画は「無原罪の御宿り」、ゴヤと同時代を生きた宮廷画家、マエーリャの作品。
受難の礼拝堂、ビザンチン様式。祭壇画は「キリスト磔刑」。
聖ヤコブ(あるいは騎士団)の礼拝堂、ルネッサンス様式。祭壇画は「ムーア人を蹴散らす聖ヤコブ」。祭壇にはモンテサ、カラトラバ、マルタ、サンティアゴなど騎士団のシンボルである十字架が刻まれています。
聖ベルナルディーノの礼拝堂、プラテレスコ様式。祭壇画は「アラゴン王、アルフォンソ5世に説教するシエナの聖ベルナルディーノ」。これはゴヤの作品で、王の隣でこちらを見ている黄色い服の人物はゴヤ自身とか。
カルロス3世の礼拝堂。
入り口の上部には左右に2つパイプオルガン。右側だけが本物で、左側は装飾。
ドーム部分に描かれた絵は聖フランシスコが亡くなる場面。
絵画館:主祭壇の裏側は絵画館になっていて、バリェウ、ルーベンス、スルバラン、アロンソ・カノ、ルカ・ジョルダーノなどによって描かれた聖フランシスコにまつわる絵画が展示されています。
聖具室:
聖歌隊席はかつてエル・パウラール修道院にあった芸術作品を、永代所有財産解放令で没収された後、ここに持って来られたもの。
教会のいたるところに見られるエルサレム十字は、もちろん聖具室の一番奥にも。
聖具室の天井には、神の手と聖フランシスコの手を描いた紋章。
巨大なドームだけでなく、見どころがたくさんのこのモニュメント、是非、ゆっくり訪れていただきたい場所です。開館時間が短いので、気を付けてください。
火曜~土曜(日曜と月曜:閉館)
7月~9月:10時30~12時30+16時00~18時00
それ以外の月:10時30~12時30+17時00~19時00
また、開館時間が変わったり、宗教行事によって突然閉まることがあるので、事前に確認してから訪れることをお勧めします。
Lucymama
【マドリッド】巨大なドームが圧巻、サン・フランシスコ・エル・グランデ教会
2021-01-17
最新記事