【マドリッド】サンタ・マリア・デル・パウラール修道院を訪ねてみた! みゅうマドリッド みゅうバルセロナ ブログ記事ページ

みゅうマドリッド みゅうバルセロナ ブログ

<< 前のページ 次のページ >>

    【マドリッド】サンタ・マリア・デル・パウラール修道院を訪ねてみた!


    2022-01-29

  •  

     

    マドリッドの北、80㎞にあるラスカフリアの町と言えば、サンタ・マリア・デル・パウラール修道院が有名。ロソージャ川沿いのトレッキングには何度か行ったことがあったけれど、今までなかなか行けなかったこの修道院を今回は見学してきました。

     

    ロソージャ川河畔の散歩コース

      

    ロソージャ川河畔の散歩コース

     

    ロソージャ川河畔の散歩コース

     

    ロソージャ川沿いの林、ボスケ・フィンランデスの池(凍ってました)

      

    修道院ネームプレート

     

    修道院の庭には天使のお人形

     

    入場はすべて事前予約制、私たちはガイドさんの案内で回る約1時間の見学ツアーを予約。ガイドさんはベネディクト会の修道士さんでした。なんの事前知識もないまま参加したツアーでしたが、まさにスペインの歴史を体現しているこの修道院のストーリーを知り、考えさせられました。

     

    1390年、カスティーリャ王国のエンリケ2世の命によって、カルトジオ会の修道院として造られる(それ以前に同王はフランスとの戦争で同派の修道院を破壊したことがあったので、その罪滅ぼしとして)。

    主祭壇と聖歌隊席が際立つ建物の最も美しい部分は15世紀末、イサベル1世の時代に造られ、16世紀に完成したクルミの樹で造られたこの聖歌隊席は、19世紀、メンディサバルの永代所有財産解放令(教会の私有財産を国が没収)によって、マドリッド市内のサン・フランシスコ・エル・グランデ聖堂へ移されましたが、2003年に現在の場所に戻されています。15世紀に造られた主祭壇はアラバスターに聖書の17の場面を彫刻し、それに彩色したもので、圧巻です。

     

    暗い修道院の中、主祭壇の奥を進んで行くと、突然、光が溢れる空間が現れました。八角形の空間の各辺に造られているバロック様式の8つの礼拝堂の金色の装飾が、高い天井に造られた窓から差し込む光で煌めいています。「トランスパレンテ」と呼ばれるこの空間のデザインを担当したのは18世紀当時売れっ子アーティストだったフランシスコ・ウルタド・イスキエルド。彼はスペインで最も美しいバロック芸術と言われるグラナダのカルトジオ会修道院の「トランスパレンテ」も手掛けている人です。18世紀バロック時代に造られた「トランスパレンテ」がスペインにはもうひとつあり、それはが見られるのはトレドの大聖堂、訪れた際には是非、見てください、お勧めです。

     

     

     

    修道院の回廊の壁には、カルトジオ会創始者ケルンのブルーノと修道会の歴史を物語る54点の絵が17世紀前半に描かれましたが、これらも聖歌隊席同様、メンディサバルの永代所有財産解放令に従って、壁から剥がされて没収され、スペイン各地の様々な場所へ移されました。聖歌隊席の帰還の後、回廊の絵も同様に元の場所に戻すべく、散り散りになっていた絵の回収とその修復がプラド美術館のイニシャチブで開始され、2011年、52点の絵画が元々あった場所、修道院の壁に戻りました。足りない2点の作品は市民戦争中に焼失してしまったそうです。

     

     

    スペイン各地に分散していた54点の絵画を示す地図

     

     

    15世紀~19世紀まで、カルトジオ会修道士たちはロソージャ川の魚を捕る、あるいは周辺一帯の森林を利用した林業や農業、羊の放牧、紙の生産などの活動でこの地域の経済を牽引していたそうです。

    ところが、1835発令されたメンディサバルの永代財産解放令はこの修道院を直撃、計り知れない芸術的価値を持つ祭壇、聖歌隊席、回廊の絵画など、そのほとんどが没収され、カルトジオ会修道僧らも追放されて、建物全体が放置されてしまいます。1876年、アルフォンソ12世が即位後、この状況を憂え、この建物全体を「国有財産」に指定したことで、廃墟となるのを免れました。

    1954年、フランコ総統が、この修道院の使用権をベネディクト会に許可し(カルトジオ会は戻る意思がなかったとされる)その後現在に至るまで、国の管轄に属す国家文化遺産モニュメントであり、現場の運営はベネディクト会に委ねられているとのこと。

    現在、この僧院には18名の修道僧が暮らしているそうで、私たちの見学ツアーを案内してくれたのは、そのおひとりでした。

    現在も18名の修道僧の方たちが食事を摂るレフェクトリウム(ラテン語の食堂)

     

    予備知識もなく、失礼ながらあまり期待もしていなかった見学でしたが、スペインの歴史、文化、芸術の奥深さを考えさせてもらえる、とても良い機会となりました。

    見学の前後には、ロソージャ川河畔の散歩で自然に触れることもできます。マドリッドから1時間のこの僧院、是非訪れてみてはいかがでしょう。

     

    Lucymama


<< 前のページ ブログ記事一覧へ 次のページ >>

最新記事