-
以前、マドリッドの街からすぐ行ける山歩きを前編と後編に分けてご紹介しましたが、今日は、その続きです。
突然ですが、皆さん、ユネスコの世界遺産、スペインにいくつあるかご存知ですか? 今年7月で合計49カ所になりました! 最新の世界ランキングでは、イタリア(58)、中国(56)、ドイツ(51)に次いで第4位。ちなみに日本は25カ所で11位です。
スペインの49の世界遺産の内、5つはマドリッド州にあります。「エル・エスコリアルの修道院」、「アランフェスの文化的景観」、「アルカラ・デ・エナ―レスの大学と歴史地区」、そして今年7月に新たに登録された新しいコンセプト(自然と文化と芸術が共存する市街地)の世界遺産、「マドリッド市内のパイサヘ・デ・ラ・ルス(光のある風景)」。あれっ、ひとつ足りない? はい、もうひとつはユネスコ自然遺産に指定されている欧州におけるブナ林の南限、モンテホ・デ・ラ・シエラのブナ林(Hayedo de Montejo de la Sierra)です。
この地図で、濃い緑色で表示されている場所です。
このブナ林、世界遺産に指定されている自然保護区なので、自由に入ることはできません。入場は無料ですが、日時枠別に人数制限されているので、事前に専用ウェブサイトから予約をして、送られて来たQRコードの予約確認証を持参しないと入れません。
8月某日、めでたく予約が取れて、モンテホ・デ・ラ・シエラのブナ林へ出かけました。
マドリッドを出て自動車専用道A-1をブイトラゴ・デ・ロソジャまで北上、そこからM137号線で北東に進みブナ林の属する村、モンテホ・デ・ラ・シエラの村へ、ここでちょっと休憩。この村には名物のお菓子があり、その名もコホヌード(Cojonudo)!
これがコホヌード、揚げたパイ生地の中にカスタードクリームが詰まったお菓子。
Cojonudoとはスペイン語のスラングで「めっちゃいい、やばい、素晴らしい、美味い」というような意味で、いろんなモノや場面に使われる感嘆詞的な形容詞。村に入ってすぐ、市役所の隣にある「ナニおばちゃんのパン屋」のコホヌードが一番人気らしいのですが、残念ながら夏休みで閉まっていたので、すぐそばにある「ピリおばあちゃんのカフェテリア」でコーヒーとコホヌードをいただきました。その名の通り、コホヌード! 何個でも食べられる、やばいです。
ピリおばあちゃんのカフェテリア
村の中心にある3つの口から水が出る泉
コホヌードを食べてご機嫌な気分になって、ドライブを続けます。
M139号線で北へ向かい、真っすぐブナ林に行くこともできますが、私たちはM137号線で東に向かい、今日のもうひとつの目的地、ラ・イルエラ(La Hiruela)という可愛らしい村に寄ります。村の入り口、児童公園脇のパーキングに駐車。
この一帯、シエラ・デル・リンコン(Sierra del Rincon)は生物圏保護区に指定されています。
小さな村は高い部分と低い部分から成っていて、その奥の広場に教会と市役所とバルがあります。高い部分の中央を貫くピロン通りを歩いて、広場に出ました。この辺りは養蜂が盛んで、村のあちこちの軒下でハチミツを売っています。
広場で村は終わり、その先はオーク(樫)の林が広がっていますが、私たちは林の中を歩いてハラマ川の畔まで緩いトレッキングコースを歩きます。途中、昔の養蜂場跡が保存されている場所を通りました。
オークの森を歩く
昔の養蜂場跡
かつてハラマ川の流れで動いていた水車跡があり、その周りは家族連れや若者たちがのんびり寝転んだり、お弁当を食べたり、のどか~。私たちもここでお昼ご飯!
ランチを食べてちょっとのんびりしたら、今日の最終目的地、ブナ林に向かいます。
ラ・イルエラの村に戻り、車でさらにM137号線を進み、県境を越えてグアダラハラ県に入ってGU187号線を西へ進めば、ほんの15分ほどで世界遺産のブナ林に到着。
モンテホ・デ・ラ・シエラのブナ林(Hayedo de Montejo de la Sierra)の入り口、ここには常駐のスタッフがいる訳ではなく、ネットで予約した時間になると、専属のガイドさんがやって来て、その時間枠に予約した人たちが集まると、入り口を開けてくれて一緒に中に入り、ガイドさんの説明を聞きながらブナ林を歩きます。約1時間半のツアーです。
ブナ林の入り口
私たちの予約は16h00、15分前に到着して、ガイドさんが来るのを待ちました。
ハラマ川のこちら岸がマドリッド州マドリッド県、反対側の岸はカスティージャ・ラ・マンチャ州グアダラハラ県ですが、世界遺産に指定されているブナの南限保護区はマドリッド州に属しています。保護区内で最も多いのはオーク(樫)の樹で、その中にブナの樹が点在している感じです。
ガイドさんの説明で初めて知りましたが、ブナの樹というのは非常に高く伸び、たくさんの枝に葉が密集するため、木漏れ陽が樹の下の地面まで届かないので、下草というものがほとんど生えないのだそうです。
確かに、ブナ林の樹の下には穏やかな空間が広がっているのを感じました。
保護区の中を歩く際、ガイドさんから「私の後をついて来てください、決して道を外れて林の中に踏み込まないように!」と事前に言われていたのですが、なぜだか分かりますか?
ブナは種を付けて繁殖できるのが4年に一回だけ、それ以外の3年は種が付かないのだそうです。ここのブナたちが最後に種を付けたのが、昨年、2020年。
この写真を見てください。
手前の丸太の間に生えて来た小さな双葉、これが2020年の種が落ちて発芽したもの、奥にいくつか見える4枚とか6枚の葉がついているのが2016年に落ちた種たちが発芽して生き延びたものだそうです。
そしてこれは、ガイドさん曰く、2000年頃に落ちた種から出た芽が生き延びてここまでに育ったものらしいです。20年でこの大きさ。
この一帯のミクロクリマがブナの生息できる環境を提供しているため、欧州におけるブナ生息の南限となっていますが、4年に一度宿った種が落ちても、発芽するものは極くわずか、そして動物に荒らされたり、暑さにやられたりと、大きな樹に生き延びることはなかなか難しいのだそうです。
だから、奇跡的に芽吹いて、一生懸命生き延びようとしている若木たちを大切にしなければならないのですね。
地球温暖化の進む中、このブナの芽たちが健やかに成長してくれることを祈ります!
Lucymama
【マドリッド】都会のすぐそばにユネスコ世界遺産のブナ林
2021-09-22
最新記事