ヘンカーシュテーク
ドイツのバイエルン州にあり、中世の時代から伝統を受け継ぐ都市として知られるニュルンベルク。現在に至るまで旧市街が城壁によって囲まれているこの都市は、ペグニッツ川と呼ばれる川の両側へ広がっている街です。
ペグニッツ川には数多くの橋が架けられていますが、その中の一つがヘンカーシュテークと呼ばれる屋根付きの橋です。ヘンカーシュテークは、1457年に建てられた橋で、1595年に洪水の被害で屋根が壊れましたが、その後1995年に復元が行われ、現在は趣のある場所としてニュルンベルクにおける観光名所の一つに数えられています。
この橋の名前は、死刑執行人の小橋というような意味合いを持っています。その理由は、ここにはかつて絞首刑執行人が住んでいたという史実に由来するためです。当時は宗教的な側面から絞首刑執行の役職に就く者が卑しい者として扱われ、絞首刑執行人は一般の人々から忌み嫌われる存在として隔離されるように暮らしており、19世紀になるまでここに居住していたと伝えられています。
見どころ
ヨーロッパの中でもドイツは、中世ヨーロッパの面影を色濃く残す都市が数多く存在していますが、時代の流れを思わせる佇まいを見せる都市の景観からは、長い年月を経てきた歴史を感じることができます。ニュルンベルクはそうした古い街並みをゆっくりと眺めるのに最適な場所ですが、とりわけヘンカーシュテークの佇む場所は、煌びやかな観光地から距離を置いて、自分の足で街を歩き、静かに気持ちを落ち着けたい時に訪れる場所としてぴったりのエリアです。
この橋には、死刑執行人が世間から隠れるようにして暮らしていたという暗い歴史がありますが、川岸の木々の緑や橋の姿が川面に映える風景はそんな史実が存在する場所とは思えないくらい美しく、この場所を訪れる人の気持ちを優しく包んでくれます。川の上に架かる橋の様子はどこか寂しげな風情を感じさせますが、この橋の周辺に生えている木々はまるでヘンカーシュテークに寄り添うような様子で、特に紅葉の時期になると一際この場所を優美な景色に一変させます。
ヘンカーシュテークは、橋自体の構造が住居のような空間になっていることも特徴で、現在では博物館的なスペースもあり、ニュルンベルクが辿った歴史を垣間見ることができます。橋から望むと、三角屋根が特徴の可愛らしいワイン蔵や家々が川岸に並んでいる景色を見ることができ、酒場のような店やカフェなどが立ち並んでいる界隈を眺めながら、この地に住んでいた人々に思いを馳せることができます。