アルト・ドウロ・ワイン生産地域
ポルトガル第二の都市ポルトから東へ100km、ドウロ川上流には、ポートワインの生産で有名なアルト・ドウロ・ワイン生産地域が広がっています。この地域のワイン造りは2000年前のローマ帝国時代に始まったとされています。5世紀から11世紀、ワイン文化のない西ゴート王国と宗教的に禁酒だったウマイヤ朝の支配を受けた時期にワイン造りは廃れましたが、12世紀にポルトガル王国が独立すると、アルト・ドウロ・ワイン生産地域は解放され、再びワインの生産が盛んになりました。15世紀に大航海時代が到来すると、ポートワインの需要が一気に高まりました。ポルトガルから赤道を何度も跨ぎインドを目指す長い航海では、水は一か月、ワインも三か月で腐ってしまいます。ポートワインはブドウの発酵中にブランデーを加えて造られ、アルコール度数が20度ほどと高く、長期保存が可能なので、インドへ向かう長旅には必要不可欠なものでした。フランシスコ・ザビエルが織田信長にワインを贈ったという逸話が伝わっていますが、それもこのアルト・ドウロ・ワイン生産地域で造られたものかもしれません。
見どころ
アルト・ドウロ・ワイン生産地域では様々なワインの楽しみ方があります。ポルトから電車でアルト・ドウロのワイン集積所のレグアまで行き、船でドウロ川を下るクルーズは人気があります。ブドウの段々畑を眺めながら食事とワインを味わい、途中のワイナリーで工場見学とテイスティングをし、お土産用のワインを選ぶのはいかがでしょうか。また、夏の時期にはポルトガル鉄道がレグアからさらにスペイン寄りのトゥアの間で観光列車を走らせています。車内では音楽隊のアコーディオン演奏や、ポートワインとお菓子のサービスが列車の旅を盛り上げます。この路線は、この地域でとれたワインの原料をポルトへ運ぶために作られたという歴史があり、駅ではその当時活躍した蒸気機関車が展示されています。近年、ワイン農家が自宅に小規模なワイナリーと民宿を併設した施設も登場しています。中には18世紀に建てられた古い様式の建物もありますが、部屋は改装されて空調はもちろんプールなども付いた美しい別荘のようになっています。食事つきの宿がほとんどで、ワイン造りの専門家が、食前の白ポートワインから食後のデザートと頂く赤ポートワインに至るまで、食事に合わせたワインを選んでくれます。ポートワインの他に、ブランデーを入れないタイプのドウロワインと呼ばれるワインを作っているところもあり、農家ごとに違う味わいがあります。気温の寒暖差が大きく雨の少ないこの地域でできるドウロワインは重厚で、プロシュートハムやチーズとの相性は抜群です。