アルカンタラ橋
アルカンタラ橋があるトレドは、スペイン中央部の都市で、トレド県の県都になります。マドリードの南に位置するこの街にはタホ川が流れます。この地域は、ローマの領地、西ゴート王国、ウマヤ朝(イスラム)、トレド王国、カスティーリャ王国(キリスト教)と統治者が変わった地域であるため、ローマ様式、イスラム教文化、ユダヤ教文化、キリスト教文化等様々な文化の影響が残っています。アルカンタラ橋は、トレドの旧市街を囲む川にかかる歴史的な橋です。ポルトガルとの国境に面する街アルカンタラと同じ名を持つのは、名前の由来が同じだからです。鉄道のトレド駅を降りてから、トレド旧市街を目指して5分ほど歩いたところにあり、アルカンタラ橋を渡ると、トレド旧市街に入ります。
見どころ
トレドの旧市街は3方をタホ側に囲まれており、2つの有名な橋が架かっています。その一つのアルカンタラ橋は、アルカンタラの街と同様アラブ語で、放水路を意味するアル・カンタラトに語源を持ち、全長194m、高さ71mの橋です。橋はローマ時代の106年頃に完成され、当時の皇帝のトラヤヌス帝をたたえるために建設されました。その後、西ゴート王国、イスラム時代にも損傷を受けるたびに改修が加えられています。10世紀の改修では3つ目のアーチーは取り外され、馬蹄型の通路に縮小されました。1257年の洪水で橋が大幅に被害を受けると、カスティーリャ王国(後のスペイン王国)のアルフォンソ10世が大規模な改修と増築を行いました。この際にムデハル様式の西搭が追加されています。そして、イスラムからの脅威に備えるため、武器を飾る壁も増築しましたが、この時はイスラムの脅威を払いきれてはいなかったため、壁のグラナダの果実(イスラムの象徴)の彫刻は欠けた状態で彫られました。1721年にはアラブ様式の搭が荒廃してしまったため搭を怖しバロック様式の凱旋門に取り換えました。入り口の門には、ハプスブルグ家の紋章である双頭の鷲が取り付けられており、橋の搭にはカスティーリャ王国とレオン王国の紋章も残されています。このように、アルカンタラ橋には過去の改修の影響が様々な場所に残っています。アルカンタラ橋の手前から、トレドの旧市街を見る風景は、写真を撮るのにも絶好のスポットです。