シシングハースト城
シシングハースト城はロンドンの南東、豊かな田園地帯が広がるケント州にあり、現在はイギリスのボランティア団体ナショナル・トラストによって所有・管理が行われています。城そのものよりも城内に広がる庭園が有名で、四季折々の美しい草花を見に世界中から観光客が訪れています。土地自体は古くからあり、中世には防衛用に備えられた3つの塀を持つ建物が建てられ、14世紀以降はしばしば王族の滞在地として用いられました。17世紀以降、建物は戦争捕虜の収容に使われたり農場労働者の住宅となったりと様々な用途に使われ、現在のように優美な庭園が見られるようになったのは20世紀になってから、詩人のヴィタ・サックヴィル=ウェストとその夫で作家・外交官であったハロルド・ニコルソンの手によってでした。2人は1930年代、当時は廃墟となり荒れ放題であった土地を買い取り、20年以上かけて建物の修復や庭園の整備を行ったのです。庭園内は高く刈り込まれた垣根やレンガ壁によって区切られ、区画ごとにテーマに沿った様々な草花が植えられており、訪れる度に異なる表情を楽しむことができます。
見どころ
シシングハースト城の庭園はガーデニングが盛んなイギリスにあって「イギリスの宝石」と呼ばれるほどに完成度の高い庭園です。夫であるハロルドが庭園のデザインを、妻のヴィタがカラースキームと植栽をそれぞれ担当した庭園はバラを始めとして様々な草花で彩られ、訪れる人を魅了しています。正面入り口から見て中央奥に見えるシンボルタワーを上ると庭園全体を見渡すことができ、庭園の構造がよくわかります。ホワイトガーデン、ハーブガーデン、ローズガーデンなど様々に名付けられた区画がありますが、全て連続したものとして設計されており、それぞれの区画の美しさを際立たせるようにドアや垣根が設定されています。隣りの区画に入ると突然新たな光景を見つけたり、別の区画に誘導しつつ新たな発見ができるよう小道が設計されていたりと趣向が凝らされています。庭園内は至る所でヴィタの色彩感覚が発揮され、特にコテッジガーデンという2人のプライベートな空間だった場所では赤・黄・オレンジに色彩が限定され、ビビットな雰囲気を作り出しています。また、庭園内にはオースト・ハウスという醸造用ホップ乾燥のための家屋もあります。かつては屋内の床に取り付けられた窯で木炭を燃やし、摘み立てのホップを乾燥させる場所でありましたが、役目を終えた現在はミュージアムや記念館として保存されています。その他にもレストランやお土産物屋さんもありますので、園内見学の合間に訪れてみてはいかがでしょうか。