アルカサル
スペインのセビリヤに建つ、アルカサルがある場所には、もともとイスラム教徒アルモアド族の城がありました。
イスラム教徒がセビリヤを去って、およそ80年後、カスティーリャ王で、残忍王とも呼ばれたペドロ1世によって、1362年に、現在の宮殿が建設されました。
建設にあたっては、同時期に建てられた、同じくスペインのグラナダに建つアルハンブラ宮殿の装飾を、体系的に模倣してつくられたと言われています。そのため、その後の時代に、度重なる改築が行われたにも関わらず、当時のイスラム教徒の建築様式であるムデハル様式の装飾を、きわめて純粋なかたちでのこしている貴重な建物となっています。
アルカサルの建物の中で、イスラム教徒アルモアド族の時代の部分は、白亜のパティオと呼ばれる部分、さらに、狩のパティオとライオンのパティオを隔てる城壁部分に、わずかにのこるのみで、その他の部分は、その後のキリスト教徒の時代のものとなっています。
見どころ
アルカサルを訪れて最初に出会うことになる、「残忍王ペドロの宮殿」と呼ばれる部分のファサードは、アルハンブラ宮殿の黄金の間に着想を得たという、大変美しいものになっています。
内部の、「乙女のパティオ」と呼ばれる部分は、16世紀に2階部分が付け加えられてしまっていますが、それでもバランスのとれた配列の、素晴らしい装飾を見ることが出来ます。
また、このパティオの周りには、スタッコや色鮮やかなタイルによる、美しい天井を持つ部屋が、たくさん並んでいます。中でも、独特の格天井で最も有名な「天井の間」と呼ばれる部屋や、残忍王ペドロ1世の愛妾アリア・デ・パディリャの居室、「大使の間」などが、その美しさにおいて、特に際立っています。
「人形のパティオ」と呼ばれる優雅な中庭の周りには、カトリックの女王イサベルのための寝室や、「アラブ王の寝室」と呼ばれる部屋など、美しいスタッコによる装飾や、壁に精緻なモザイクが施された部屋が並んでいます。
また、「カルロス5世のパビリオン」と呼ばれる部分には、1535年の、神聖ローマ帝国皇帝カルロス5世によるチュニス征服の場面が描かれた、大変美しいタペストリーのコレクションがあるので、見逃してはいけません。
建物東側の庭園には、外国産の珍しい木々や、暖かい地域特有の草花が植えられ、エキゾチックな雰囲気を味わうことが出来ます。
その庭園から、小径を通って「旗のパティオ」と呼ばれる小さな広場に出ると、セビリヤ大聖堂とヒラルダの塔を背景にした、美しいファサードの眺めを楽しむことが出来ます。