-
イタリアソムリエ協会のマスターソムリエの資格を持っている うしおゆにこ です。
今回はヴェネト州のワインをご紹介します。
イタリアで最も重要なワインの見本市は、ヴェローナで行われるヴィニタリーです。
毎年1回、4月(復活祭を避けて、3月の終わりの場合もあります)に行われます。
オリーブオイル、醸造関連機械、有名シェフの参加があるなど、その規模はかなりのものです。
では、ヴィニタリーはなぜヴェローナで行われるのでしょうか?
その規模を考えると、ミラノの見本市で開かれても良さそうなものです。
答えは、ヴェネト州がイタリアで最もワインの生産量が多く、イタリアのワイン業界で最も強い力を持っているからです。
イタリアワインの王様と言われるバローロはピエモンテ州で造られていますが、ピエモンテ州の生産量は、ヴェネト州の4分の1にしかなりません。
ミラノのあるロンバルディア州は、特に秀でたワインを産出している訳ではありませんし、同じことが、ローマのあるラツィオ州にも言えます。
そこで、ヴィニタリーが開かれるのはやっぱりヴェローナになるのです。
さて、ヴェローナは、なんと言ってもロミオとジュリエットの舞台となる町です。
ジュリエットの家には有名なバルコニーがあり、街の中心にあるアレーナはコロッセオを思わせる外観で、夏に行われる野外オペラはとても雰囲気があります。
ヴェネト州の州都はヴェネチア。サン・マルコ広場、サン・マルコ寺院、リアルト橋、ため息の橋。。。見どころがいくつもある、一生に一度は訪れたいロマンチックな水の都です。
さて、ヴェネト州のワインのキーワードは以下です。
* ヴェネト州を代表するアマローネは、ブドウが凝縮された赤ワイン。
* イタリアを代表する歴史的白ワインはソアーヴェ。
* なんと言ってもプロセッコの本場。
さて、まずアマローネから見てみましょう。
「アマローネ」と通常呼びますが、正確な名前は、「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ(DOCG)」。「ヴェルポリチェッラのアマローネ」という意味で、基本のワインは「ヴァルポリチェッラ(DOC)」です。
イタリアワインは複雑でわかりにくいと言われますが、ヴァルポリチェッラだとやや軽めの赤ワイン、それにアマローネが付くと非常にアルコール度の高い、重たいワインとなり、名前は似ていても、味わいと値段に天と地ほどの違いがあります。
どちらも、品種は、コルヴィーナを中心に、ロンディネッラなどをブレンドして造られるのですが、ヴァルポリチェッラの方は一般的なイメージの赤ワインで、さくらんぼの香りが綺麗、肉料理全般に合う、割とオールマイティなワインです。
しかし、アマローネの方は、ブドウを干して造る、ちょっと特別なワインです。
通常、甘いデザートワインを造るときに使う製法ですが、アマローネは基本、辛口のワインになります。
収穫したブドウを平らな箱に並べ、屋根裏などで(今は空調設備がある部屋を使うことも多いです)3ヶ月程度乾燥させます。
そうすると、水分が蒸発して干しブドウ状になり、そのブドウを絞ってワインを造ります。
液量、つまり生産量が極端に少なくなるのですが、それだけではなく、ブドウの液が非常に凝縮され、発酵が難しくなります。
熟成(木樽で3年以上、リセルヴァは4年以上)にも時間がかかり、非常に手間のかかるです。
基本的には辛口ワインですが、糖分がほのかに、または結構残るタイプもあり、アルコール度は通常15%かそれ以上になります。
色が濃く、フルーツのコンフィ、スパイス臭などが感じられ、フルボディで、煮込んだ肉料理と共に、また、熟成したチーズと一緒に食後のひと時を楽しむことができるワインです。
なお、ラベルに「クラシコ」が付いていれば、範囲がより狭い、伝統的生産地のものということです。
さて、もう一つ、またこの辺りがイタリアワインが複雑なところなのですが、またちょっと変わったタイプがあります。
それが、「ヴァルポリチェッラ・リパッソ(DOC)」です。
リパッソは「もう一度通す」という意味ですが、アマローネの生産の際にできたブドウの絞りカスを使って、ヴァルポリチェッラに再発酵を促して造ります。
普通のヴァルポリチェッラより濃厚な味わいになるので、しっかりした味のメインの肉料理に合わせると良いです。
また、「耳たぶ」という意味のレチョートが付く「レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ(DOCG)」は、甘い赤のデザートワインで、チョコレートやチーズと一緒にいただきます。
ヴァルポリチェッラの名前が付いているワインで、こんなにたくさんのタイプ、味わいの違うワインがあるので、どうぞご注意を。
さて、アマローネの生産地域のすぐ隣で、「ソアーヴェ(DOC)」が生産されています。
ソアーヴェは、歴史的に早くからアメリカに輸出されたワインの一つで、イタリアを代表する安め、軽めの白ワインです。
品種は、ガルガネガが中心で、上級クラスの「スーペリオーレ」が付くとDOCGになり、
「クラシコ」が付くものの他、「リセルヴァ」もあります。
すっきりした軽やかなタイプのものが多く、魚料理全般に合わせることができます。
ソアーヴェにも、レチョートが付く「レチョード・ディ・ソアーヴェ(DOCG)」があり、こちらは甘いデザートワインです。良いものは貴腐の付いたブドウを使うこともあり、より濃厚な味わいになります。
さて、イタリアで「プロセッコ(DOC)」を飲んだことがない人はいないと思います。
実は、プロセッコには発泡でないものもあるのですが、一般には軽い発泡性ワイン、スプマンテとして知られています。
品種は、昔はプロセッコと呼ばれていましたが、今はグレラと呼んでいます。
2020年、コロナが蔓延し、レストランがロックダウンでクローズになり、家飲みワインの販売量が増加したのですが、それが落ち着くとワインの販売量は減少、しかし、スプマンテの消費量は相変わらず増加しています。
これは、以前は、スプマンテというと食前酒として乾杯用に1杯飲む程度、または、食後のデザートに合わせるとか、お祝いの乾杯に開けるなどだったのが、スプマンテで食事をする人が増えてきたことによります。
そうなんです。スプマンテで食事、とても贅沢、幸せな気分になりますので、ぜひ試してください。
さて、スプマンテの造り方は、大きく分けて、瓶内2次発酵方式(シャンペンの造り方)とタンクでの2次発酵方式があり、プロッコは後者で、一般的にシャルマー方式と呼ばれます。
タンクを使うことで、嬉しいことに、安く簡単に、軽めの発泡のスプマンテが造れるのです。
なお、ところで、プロセッコの生産範囲は非常に広く、隣のフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州でも造られていますが、本場はこちらなので、ぜひ、ヴェネト州のものを探してください。
プロセッコにもDOCGを名乗れる生産地域があり、コネリアーノ、バルドッビアーデネ、アーゾロのものです。
なお、プロセッコは、辛口(ブリュット)もありますが、よく見かけるのはエクストラ・ブリュットで、ほのかに甘いのですが、プロセッコの場合は、こちらの方が全体のバランスが取れておすすめです。
食前酒から、魚介中心の食事、鶏肉の料理などと共に、そして、軽めのデザートと合わせることもできて、活躍の場が広いです。
その他、ガルダ湖近くでは軽めの赤ワイン「バルドリーノ(DOC)」が造られ、「スーペリオーレ」はDOCGになりますが、中でも「キアレット(DOC)」と呼ばれるロゼが、軽やかで香りも良くおすすめです。最近は、イタリアでもロゼワインがとても人気ですが、よく冷やして魚料理に、または、夏は赤ワインの代わりに開けるのにもピッタリです。
ヴェネト州にはまだ他にもたくさんのワインがありますが、このくらいにして、また次回をぜひお楽しみに。
【マスターソムリエが教える】ワインの見本市「ヴィニタリ―」!ヴェネチアのワインのを見る!
2022-05-16
最新記事