Uffizi美術館でふと見逃してしまう作品 2 みゅうローマ みゅうベネチア ブログ記事ページ

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    Uffizi美術館でふと見逃してしまう作品 2


    2020-10-02

  • 皆さんこんにちは!フィレンツェ公認ガイドの福島久子です。

    前回もしUffizi美術館の中でどれか絵を持って行って良い!と言われたらロッソフィオレン ティーノのリュートを弾く天使をもらいたい。という話をしましたが、私が2番目に欲しいのはこちらの絵です。(もらえるはずはありませんが、空想の中で)

    ピエロ.ディ.コシモ
    アンドロメダを救うペルセウス

    本当は怖いお話なんでしょうが、何となく描き方が愉快で笑ってしまいたくなります。

    画家は1つの場面に3つの物語を描いています。

    エチオピア王の美しい娘アンドロメダは、海の精ネレイスよりも美しいと誇った母親カッシオペーの過ちを償う為、枯れ木に縛り付けられ、怪物の生贄にされようとしています。

    浜辺では母親が絶望して泣き伏し、そこへ王である父親が、アンドロメダの叔父で婚約者のピーネウスを伴ってやってきます。(赤いマントと赤い帽子が婚約者)その時ペルセウスが翼のあるサンダルを履いて空を飛んでやって来て、彼女に一目惚れして、勇気に満ち溢れた様子 で、怪物に飛びかかって殺害し、アンドロメダを救い出します。

    繋がれているアンロメダは、恐怖と今にも助けてもらえるという期待のはざまで美しい表情を見せています。

    しかし怖い場面という印象よりは、全体的にのほほんとして、ピエロが想像力を働かせて描いた怪物も鼻から煙を吐き、口からはよだれが滴り落ちていて、恐ろしいという印象がなく、何となく置物みたいに見えます。そして空を飛んでいるペルセウスもなんだかのんびり飛んでいるのであまり緊迫感がありません。

    またピエロは背景にかなり注意を払っていて、これはフランドルの影響をうけています。左側のターバンを巻いた人物、細部まで描かれている岸辺に至る水、それに素晴らしく描かれた楽器などがあります。

    またよく見ると怪物の下の海藻から赤い珊瑚が映えているのがわかります。ペルセウスは盾に映った蛇の髪を持つメデューサの首を切り取って退治しますが、そのメデューサの首から流れ落ちた血が海藻に触れて真っ赤な珊瑚に姿を変えたと伝えられています。

    そのためか昔からヨーロッパでは赤い珊瑚 は魔除けとして珍重されています。

     


    海藻から珊瑚が生まれるところ

    ヴァザーリによるとピエロは人嫌いの変わり者だったとされ、自宅の庭を「自然のままが良いのだ」と言って雑草が生い茂るままにしていたと言います。

    孤独をこよなく愛し、独りぼっちで空想に耽っていたようで、常に室内に閉じこもり、仕事をしている様子を他人に見せず、人間というよりは、獣に近い生活を送るようになっていたとことです。

    このように一風変わっていて奇妙な想像力に恵まれていたので、このような面白い絵が描けたのかもしれませんね。


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