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    【スペイン郵便事情】 日本から送る手紙にも通関手数料?!


    2021-09-27

  • マドリッド中央郵便局入り口

     

     

    先日、SNSで「日本から家族が郵送してくれた手紙を受け取る際5.81ユーロの『通関手数料』を徴収された」ことが話題になっていました。

    スペインに暮らす私たち日本人にとっては『ゆゆしきこと!』、なのでみゅうマドリッドでも独自に調査してみました。

     

    まずは、従来の状況を整理しておきましょう。

    1)日本から送った郵便物の届き方:スペイン郵便の直接配達とADT介入による配達

    日本からスペインへ送った郵便物はスペイン郵便(Correos de España)が取り扱うのですが、内容物の性格によって取り扱い方が次の2つに分かれます。

    輸入手続きを伴う郵便物:スペイン郵政グループ(Grupo Correos)に属する一企業であるADT Postalesという会社に振り当てられ、自動的に同社に通関手続きが委託されます。ADT Postalesが介入する場合、まず郵送物は税関エリアに止め置かれ、ADTが受取人に通知と見積書(関税、IVA、通関手続き手数料など)を送り、受取人がそれを支払うと、通関手続きを代行して、自宅まで配達してくれる、という流れになります。

    通関業務が不要な郵便物:スペイン郵便が従来からあるシステムを通じて取り扱う、つまり郵便配達人が私たちの自宅に現物を配達してくれる、あるいは通知を届けてくれて私たちが最寄りの郵便局へ引き取りに行く、という形です。

     

    2)EU圏以外から届く郵便物のこれまでの輸入規則:商業目的は22ユーロまで、個人間は45ユーロまでの免税。

    従来、EU以外の国からスペインへ届く輸入手続き対象の郵便物に関しては、税関において以下の規則が適用されていました。

    商業目的の郵便物(ネットなどで注文した商品が郵送されてくる場合、特に中国から発送されるもの)

    商品の金額と郵送コストの総額が:

    *22€未満の場合:IVA(付加価値税、日本の消費税のようなもの)と関税の両方が免除される。

    *22€以上の場合:IVAのみ課税される。

    *150€以上の場合:IVAと関税の両方が課税される。

    商業目的以外、個人間の郵送の場合(日本の家族や友人からの郵送)

    中身の価値と郵送コストの総額が:

    *45€未満の場合:IVAと関税の両方が免除される。

    *45€以上の場合:IVAと関税の両方が課税される。

     

    3)7月1日からEU輸入規則の変更によって、免除が撤廃

    商業目的の郵便物(ネットなどで注文した商品が郵送されてくる場合、特に中国から発送されるもの)

    >22€未満の商品に適用されていたIVA課税免除がなくなり、IVAが課税されることになりました(150€未満は関税は課税されない)

    商業目的以外、個人間の郵送の場合(日本の家族や友人からの郵送)

    >この場合の45€未満の免除が同様に撤廃されたかどうかに関して、ネットを探しても見つけることができませんでした。

    ★EUによる新規則の発表ページ

    ★スペイン国税庁(Agencia Tributaria)による新規則発表ページ

    ★スペイン郵便(Correos de Espana)による新規則発表ページ

     

    4)建前とは異なる現状:スペイン暮らしの郵便事情あるある!

    類似した内容の郵送物でも、問題なく届く(配達人が自宅に配達、あるいは最寄り郵便局に出向いて引き取り)の場合と、ADTが介入する(ADTから通知が来て、税金を支払って届けてもらう)場合があり、どこからその違いが生じるのか不可解、あるいは45€未満の場合で免税が適用され通関不要のはずが、ADTの介入があり税金を払わないと受け取れない場合があり、なぜなのかが不可解など。

     

    5)8月にSNSで話題になった問題のケース:書簡は輸入品か?

    冒頭でお話したケース、つまり、日本の家族が送ってきた、便箋が封筒に入っているだけの普通の手紙(中に商業価値のあるものは入っていない)を受け取る際に、「通関手数料」を請求されたケース。当事者の方が、お金を支払った郵便配達人に交渉して入手された請求書(領収書)を見せて頂き、ご本人の許可を頂いたので、ここに添付します。Descripcion/G aduaneraは「通関手数料」で、それに21%のIVAが加算されて、5.81ユーロ。

     

    このケースで浮上して来る疑問は次の2点になると思います。

    A:封筒の中に便箋がはいっているだけのこのような書簡も輸入品として扱われ「通関手続き」の対象となるのか?

    B:もし、輸入品対象となったとしても、個人間送付の45€まで税金免除の適用はされなかったのか?

     

     

    以上、現状を整理したうえで、上記の疑問A.B.を解決すべく、リサーチを開始しました。

     

    1.在スペイン日本大使館

    領事部の方に事情説明し、書簡に対して輸入手続きが適用されて通関手数料の支払いを求められた邦人が他におられないか、このようなケースに関する情報をお持ちでないか、またこのような徴収が発生する法的根拠についてご存知ないかを尋ねたところ、このようなケースの報告は届いていない旨。また、経済部にも照会して確認して頂きましたが、前述の3)以外の情報は入手されていないとの回答をいただきました。

     

    2.最寄りの郵便局

    私(みゅうマドリッドスタッフ)の自宅近くの郵便局へ出向いて窓口でA.B.の質問をしたところ、即答で「そういう話は、郵便局(Correos)ではなくADTが担当だから、ADT Postalesに尋ねるように!」と言われ、それ以上一切取り合ってもらえませんでした。

     

    3.ADT Postales

    郵政グループ(Grupo Correos)に属し、スペインに入って来る郵便物の輸入手続き・通関業務を代行する委託企業であるADT PostalesのHPに入り、質問方法を模索したところ、電話番号は一切なし、HP上にあるサーチ機能やチャット機能は具体的な「送付番号(Numero de envio)」がないとまったく使えない、メールなどによる問い合わせアクセスが一切存在しない、対面で質問ができるオフィスが存在するか、調べてもまったく分からない、と埒が明きません。

    その一方で、インターネット上にADT Postalesに対する不満や低評価が溢れていることがわかりました。一例がこれ。

     

    4.マドリッド中央郵便局

    シベレス広場にある市庁舎に隣接する中央郵便局。

    窓口スタッフに事情説明したところ、フロア奥の上司に上げてくれて、責任者のひとりが直接アテンドしてくれました。1時間近くいろいろ調べてくれましたが、その人から確認できたのは、手紙(中に便箋や写真など以外は入っていない)やハガキに関しては、通関手続きは不要であるから通関手数料が発生するはずがない/提示した「5.81€の請求書」の意味は不可解であるが、偽物とも言えない/国際郵便の取り扱いで最近の唯一の変更は、「7月1日から商業目的の郵便物(ネットなどで注文した商品が郵送されてくる場合、特に中国から発送されるもの)に関して22€未満の商品に適用されていたIVA課税免除がなくなり、IVAが課税されることになった」ことのみである/ADT Postalesのオフィスはどこにあるかは知らない/この件を解決するには空港の税関エリアにある郵便局に行って確認することを勧める、でした。

     

    5.マドリッド空港カーゴ棟近く、税関エリアにある郵便局

    空港カーゴエリア

    カーゴエリア内、税関に隣接する郵便局入り口

    郵便局窓口

    はるばる、地下鉄を乗り継いで1時間半かけてマドリッド空港カーゴエリア内にある、税関に隣接する郵便局に出向きました。窓口のスタッフに相談したところ、とても親切に対応してくれました。即答できない、調査してみるとのことで、かなりの日数をかけて郵便局長及び局内の様々な部署のスタッフにも問い合わせてくれたのですが、結論としては、請求書は偽物ではない/手紙は税関手続き不要という理解なのでなぜ関税手続き手数料が請求されているのかこの局で調べる限り分からない/スペイン郵政のHPのお客様サービスで確認するよう勧める、とのことでした。

    ここでの唯一の収穫は、ADT Postalesのオフィス窓口が分かったことで、なんと、この郵便局の隣にありました。

     

    6.ADT Postalesオフィス窓口

    郵便局窓口となりにあるADTPostalesの窓口

     マドリッド空港カーゴ棟税関エリアにある小さな窓口、これがADT Postalesののオフィスです。ここのスタッフの説明は以下のとおり。

    *スペインに入国した郵便物のうち、税関を通るものはすべてADT Postalesが取り扱い、税関を通らないものはスペイン郵便(Correos)が取り扱う。

    *7月1日の輸入規則変更前も変更後も、規則はあくまでも規則、建前。現実は、郵便物がEU圏内に着いた時点で、すべての小包をチェックするのは物理的に不可能なことから、無作為に一部が選えらばれて税関手続きに回される。税関手続きに回されたものはADT Postalesが取り扱い、税金と通関手数料の見積書と一緒に受取人宛に通知が届く。税関手続きに回されなかったものは、Correosのオフィスに直接送られ、配達される。例えば、日本から同じような内容の5つの小包を同じ人に送ったとして、3つは郵便として配達される一方、2つはAduanaに止められ、ADT Postalesから通知が届くなどということも有り得る。

    この説明を聞いて、スペインに暮らす日本人が感じること、前述4)のあるある、つまり同じように日本から送られてくる書籍やCDなどの入った郵便物が問題なく自宅まで無料で届く場合と、空港止めになってADT経由で請求書が送られてくる場合とがあるのはなぜだろうという疑問に対する答えを得たような気がしました。ダメ押しで「ということは、税関に止められるか否かは、その時の運次第ということでしょうか?」と尋ねると、「そういう風に受け取られても仕方ない部分はあるね」との返答でした。

     

    7.スペイン郵政(Correos de España)からの回答

    スペイン郵政の公式HPでリサーチを試みたところ、電話番号とチャット機能はあるものの、AI対応なので、あらかじめ設定された選択肢以外の質問には対応不可。メールによる問い合わせ機能があったので、メールにて質問を送ったところ、2日後に来た返信は全く回答になっていなかった為、メールを数回送り、催促したところ、約1か月後に返信があり、A.B.の質問に対して、「その種類に関係なく、またその価値にも関係なく、7月1日以降、スペインに入って来るすべての郵便物は輸入手続きの対象となる」との回答でした。

    さて、上記の回答から判断すると・・・・

    A:封筒の中に便箋がはいっているだけのこのような書簡も輸入品として扱われ通関手続き」の対象となるのか?

    >回答からは対象になると解釈できるように思われます。

    B:もし、輸入品対象となったとしても、個人間と送付の45€まで税金免除の適用はどうなったのか?

    >回答からは免除が撤廃されたと解釈できるように思われます。

     

    ここまで、約1カ月半ほどの時間をかけてリサーチしてきた結果、スペイン郵政の見解とADT Postalesの説明を基に考えると、日本から送った普通の手紙(書簡)も運次第では通関対象となり、その場合には手紙自体に商業価値がなくてIVAが発生しなくても通関手数料のみが徴収されることがある、つまり、今回SNSで話題になっていたようなケースがありうる、と考えられるようです。

    ただ、各機関が発表している7月1日からの新しい輸入規則発表ページの内容を読んでも、前述7のスペイン郵政からの回答を裏付ける箇所を見つけられないので、やはり不得要領な感覚はぬぐい切れませんが、このブログが実際にこんなことが起こっているという現実を知って頂く一助になれば幸いです。

     

     Lucymama

     

     


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