ブローニュ=ビヤンクールの建築巡り その②ル・コルビュジェ建築 みゅうパリ ブログ記事ページ

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    ブローニュ=ビヤンクールの建築巡り その②ル・コルビュジェ建築


    2016-10-24

  • ブローニュ=ビヤンクール市には、ル・コルビュジェ設計による邸宅が3軒存在します。

    ブローニュ=ビヤンクールは、19世紀より多くのアーティストが住み始めます。2つの世界大戦間、この市は文化的な黄金期を迎え、とくに彫刻家が居住し始めます。その中には、エコール・ド・パリ派のオスカー・ミッチャニノフOscar Miestchaninoff やジャック・リプティッツJacques Lipchitzが含まれていました。彼らは、友人の版画家のヴィクトール・カナルVictor Canaleと3軒のアトリエ兼住宅が組み合わさった共同建築の理想を持っていました。それぞれが北向きで大きな窓があるアトリエと居住空間を持つ独立した建物にもかかわらず、談話や意見交換できる空間として中庭を共有した建築です。

    彼らのアトリエ兼住居を作るにあたって、建築家を探していた時、彼らのアーティストのサークルの中には、新鋭の建築家ル・コルビュジェがいて、彼が建築を担当することになりました。

    最終的には多くの変更が加えられ、3人の共有建築の夢は実現せず、オスカー・ミッチャニノフとジャック・リプティッツの隣接するそれぞれのアトリエ兼住宅が1924年に完成しました。

     

    ミッチャニノフ邸(1924年)

     

    北側には、大きなガラス窓が付いたアトリエがあります。彫刻家のアトリエなので、天井が高く設計されています。

     

    アトリエの上が居住空間です。両空間は、角に位置するらせん階段で繋がっています。私有地なので、建築内を見ることができないのが非常に残念。

    しかし、通常は入れない中庭に今回特別に入ることができました。

    玄関は小さく設計されています。当時の伝統的な豪邸であれば、入口は豪華に装飾するのですが、機能美と単純性の美を目指した建築家らしい飾りのない入口です。

    入口には、ピロティーに支えられた橋構造の廊下があります。この廊下から中庭を眺めることができます。彼の建築内散策のコンセプトです。

    濃いクリーム色に全体が塗られています。一色のモノトーンに統一しているのも、装飾性を排除したル・コルビュジェの特徴です。

     

    リプティッツ邸(1924年)

    ミッチャニノフ邸と同じように北側に向いた大きなアトリエがあります。大きな箱に還元できるような簡略した形です。リプティッツは建築予算があまりなく、資金もル・コルビュジェに借りていたそうです。

    上から見ると、L字型になっており、アトリエに隣接している別の翼が住居空間になっています。ル・コルビュジェは外に飛び出た階段を提案したようですが、リプティッツによって拒絶されています。最終的に、らせん階段が二つの翼のつなぎ目に設置されています。

    こちらは外観がえんじ色に塗られています。隣り合う、似通った2軒のアトリエ兼住居を区別するために別々の色で塗られています。

    リプティッツは、キュビズム彫刻を作ったアーティストでしたが、彼の作品を家の外壁に埋め込んではどうかと顧客のひとりであったアルバート・C・バーンズが提案したが、ル・コルビュジェが「自分の作品にそんなことさせない」と拒否をしたという。いくら、自分が建築資金を貸しているからといって、家主の希望を完全否定できる建築家はそうそういないでしょう。歴史に名を残すには、これぐらいのアクの強さが必要なのかもしれません。

     

    クック邸(1927年)

    ル・コルビュジェが1927年にアメリカ人ジャーナリストのウィリアム・クックのために建築した邸宅。

    このクック邸では、彼が提唱した近代建築の5つのポイントが十全に具現化されていることで有名です。①    ピロティー:支柱のこと。この支柱を使い、家の床そのものを地面から浮かせることで、一階部分を吹き抜け、庭にすることが可能になりました。

    ②    屋上テラス:鉄筋コンクリートを使用することで、屋上にテラスを作ることが可能になりました。雨水を利用することで、屋上庭園が作られます。

    ③    自由な平面:鉄筋コンクリートと支柱の組み合わせは、いわゆるドミノシステムを生み出しました。天井は支柱のみによって支えられているので、仕切り壁も、外壁も一切天井を支える必要がなくなりました。そのおかげで、内部構造を好きなようにアレンジすることができます。

    ④    横長の窓:外壁が天井を支えないので、横長の窓を設置することが可能になりました。横長の窓によって、パノラミックな景観と、太陽光を最大限部屋の中に入れることが可能になります。

    ⑤    自由なファサード:支柱が天井を支えているため、外壁を自由にデザインすることが可能になりました。

    このすべての要素がコック邸のファサードに活用されています。

    一階部分は、ピロティーです。ピロティーで稼がれた空間は、ガレージや、庭園に使われています。

    二階、三階部分は、横長窓が使われています。二階は、住居空間として2つの寝室と浴室、三階部分はレセプションルームになっているそうです。

    そして、その上には、テラスが見えます。両側を別の邸宅に挟まれていますが、ファサードを見ただけでも、ル・コルビュジェの作品だとわかるほど、彼の特徴を表現しています。

    ラロッシュ・ジャンヌレ邸が1924年、白い時代の傑作サヴォワ邸が1931年なので、ちょうどサヴォワ邸に至る軌跡の中間地点として見ることができる興味深い邸宅です。

     

    ミッチャニノフ邸(1924年)

    Résidence atelier Miestchaninoff
    7, allée des Pins
    92100 Boulogne-sur-Seine
    私有地のため、内部見学不可

    リプティッツ邸(1924年)

    Résidence atelier Lipchitz
    9, allée des Pins
    92100 Boulogne-sur-Seine
    私有地のため、内部見学不可

    クック邸(1927年)

    Villa Cook
    6, rue Denfert-Rochereau
    92100 Boulogne-sur-Seine
    私有地のため、内部見学不可

     

    関係するブログはこちら

    ブローニュ=ビヤンクールの建築巡り その①市庁舎

    コルビュジェの最高傑作 サヴォワ邸

    ル・コルビュジェ建築、ラロッシュ・ジャンヌレ邸

    ル・コルビュジェ建築 パリ16区のアパルトマン兼アトリエ 


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